一般的な歯科治療とは general
『一般的な歯科治療』は、治療の需要が多い虫歯治療のほか、歯周病治療や知覚過敏の治療、歯の欠損の修復などの「よくある歯の病気やトラブル」に対する治療のことを指し、そのほとんどは保険適用で治療を行なえます。
当院では、保険適用の『一般的な歯科治療』においても綿密に治療計画を立て、患者さまに丁寧にご説明し、充分にご納得いただいてうえで治療を進めるようにしています。
症例によっては、自費診療で治療を行なったほうが治療期間を短縮できたり、将来のお口の健康にとって有益だと思われたりするような場合には、保険診療での治療とともに、自費診療での治療もご提案し、患者さまのご要望をお伺いしながら、患者さまにとってよりよい治療方法を選択できるようにしています。
レーザーによる痛みを抑えた歯科治療
歯科治療に対して「痛い」「怖い」といったマイナスイメージをおもちの患者さまは少なくありません。当院ではできるだけ歯科治療による痛みを軽減させるため、レーザーを使った歯科治療をご提供しています。
当院で使用しているレーザーはいくつかありますが、とくに『Er:YAGレーザー(エルビウムヤグレーザー)』は、生体組織の表面の水分のみに反応するため、レーザーの熱による痛みを感じることはほとんどなく、注射による麻酔も必要としません。
また、ドリルのように振動やキーンといった音が発生しないほか、周りの組織を傷付けないことで傷口の治癒も早くなるため、治療時の不快感や体への負担も軽減します。
Er:YAGレーザーは、虫歯を削る処置のほか、歯石の除去や虫歯や歯周病などの原因菌の殺菌、歯肉の切開や切除の処置、歯肉の黒ずみの除去など、さまざまな治療で活用できます。
虫歯治療
お口のなかに存在する虫歯の原因となる細菌は、飲食物に含まれる糖分を分解する際に酸を出します。この酸によって歯が溶かされた状態を『虫歯』といいます。
虫歯もごく初期の段階であれば、唾液の『再石灰化』の働きによって修復できますが、症状が進行して歯の表面のエナメル質に穴が開いてしまうと、歯科医院で歯を削って修復するという治療を行なう必要があります。
虫歯は、放置するほど治療期間も治療費もかかります。また、虫歯が進行するほどに歯を削る量が多くなるため、歯の寿命を縮めるだけでなく、神経が壊死した状態にまでなると、抜歯が必要となる場合もあります。自分の歯を長く使い続けるために、虫歯に気づいたら、できるだけ早く受診ください。
精密な歯科治療(マイクロスコープ/顕微鏡治療)
当院では、虫歯治療をはじめとしたさまざまな治療に『マイクロスコープ』を活用し、精密な歯科治療を行なっています。
『マイクロスコープ』とは、肉眼の2~24倍の拡大視野で治療部位を確認できる歯科用の顕微鏡のことをいいます。
たとえば虫歯治療でマイクロスコープを活用すると、患部の虫歯に侵蝕されている部分と健康な部分の境目がはっきりと確認できるため、歯の削りすぎを防ぎ、歯への負担を最少減に抑えることができます。
また、詰め物や被せ物の適合チェックをマイクロスコープの拡大視野下で行なうことにより、歯とのすき間のない精密な詰め物や被せ物で歯を修復できます。すき間のない詰め物や被せ物にすることで細菌の侵入を防げるため、虫歯の再発リスクの減少につながります。
根管治療
『根管治療』は、『根管』とよばれる歯の神経である『歯髄』が通っている組織のなかから、細菌に感染した『歯髄』を取り除き、根管の中に薬剤を詰めて殺菌する治療です。
根管は、直径が1mm以下と非常に細いうえに、かなり複雑な形状をしています。しかし感染した歯髄を取り残してしまうと、治療後に痛みを感じたり、膿がたまって腫れたりしてしまう可能性があります。
当院では緻密な作業を必要とする根管治療においても、『マイクロスコープ』を活用しています。
マイクロスコープによる拡大視野下で治療を行なうことにより、これまで肉眼では確認できなかった根管内の深部までしっかりと確認しながら、感染した歯髄を残さず除去できます。
歯周病治療 Periodontal Disease
歯周病の進行によって歯肉や歯槽骨(歯を支える骨)など歯の周りの組織が著しく破壊されてしまっているような場合には、それらを再生させる『歯周組織再生療法』を行ないます。
歯周組織再生療法には、bFGFとよばれる細胞を活性化する成長因子が含まれた『リグロス』(歯周組織再生剤)を使う方法と、豚の歯杯組織から抽出した『エムドゲイン』(蛋白質を主成分とする材料)を使う方法があります。
『リグロス』(歯周組織再生剤)を用いた歯周組織再生療法
『リグロス』(歯周組織再生剤)は細胞を増やす成長因子のことで、この作用により歯周病で破壊された歯周組織の再生を促進する治療法です。フラップ手術で歯垢や歯石などを取り除いた後、歯槽骨が失われた部分にリグロスを塗布することで、歯を支える歯周組織の再生が促されます。リグロスと同じ成分は、やけどや床ずれなどの治療にも使われています。
この治療法には、健康保険が適用されます。
リグロスによる歯周組織の再生
リグロスには、成長因子の作用により、歯周病で破壊された歯周組織の周囲にある細胞を増やし、血管を作って細胞に栄養を送り込む働きがあります。これらが作用することで歯槽骨などの歯周組織が再生されます。
フラップ手術(歯肉剝離掻爬術)における歯周組織再生剤の塗布
フラップ手術(歯肉剝離掻爬術)は、歯周病の基本的な治療では除去できなかった、歯周ポケットの奥深くに存在する歯垢や歯石などをきれいに取り除くために行なう歯周外科治療のひとつです。歯肉に局所麻酔をかけた後、歯肉を切開・剝離して歯垢や歯石などを取り除きます。
このときに歯周組織再生療法を併用することで、失われた歯周組織を再生させるための工夫をすることもあります。
フラップ手術後の注意点
- 麻酔が完全に切れるまでは、飲食を控えてください。
- 麻酔が切れて痛む場合は、痛み止めの薬を服用してください。
- 傷口を縫合してあるので、抜糸するまでは触らないでください。
- 手術当日は止血しにくくなるので、強く口をゆすがないでください。
- 手術当日は、激しい運動や飲酒は控えてください。
- 手術当日の入浴はシャワー程度にして、のぼせないようにしてください。
- 手術部位が奥歯の場合、数日間、食事はなるべく反対側で噛んでください。
- 術後に水がしみることがあります。
- 翌日以降、患部が少し腫れることがあります。
- 歯肉の状態が落ち着くまで、歯磨きなどは歯科医師や歯科衛生士の指示に従ってください。
- 処方した薬は用法・用量を守り正しく服用してください。
『エムドゲイン』(蛋白質を主成分とする薬剤)を用いた歯周組織再生誘導法
『エムドゲイン』とは、豚の歯杯組織から抽出したエナメルマトリックス蛋白質を主成分とする薬剤で、スウェーデンで開発され製品化されているものです。これを歯周病治療に使うことで、歯が萌出するときと同じ環境を作り出し、歯周組織を再生させられる薬剤です。この治療法には健康保険が適用されないため、自費診療となります。
エムドゲインの適応症
歯周病のすべての症状でエムドゲインによる再生療法を適用できるわけではありません。
適用できるのは、歯槽骨が全部吸収された症例ではなく、部分的に吸収された症例のみとなります。つまり、骨吸収の形態が垂直的な場合は適用できますが、歯の周囲すべて(360度)の骨が水平的に吸収されている場合は適用できません。
エムドゲインを用いた治療の流れ
1. 歯周ポケットの測定
歯周ポケットの深さを測ります。
初期治療後、歯周ポケットの深さが6mm以上、レントゲン写真で4mm以上の垂直的な欠損が見られる場合、おもにエムドゲインによる再生療法が適用されます。
2. 歯肉の切開
局所麻酔をかけて歯肉を切開し、歯根を露出させます。
3. 歯根表面の清掃
歯根表面の歯石を除去し、エムドゲインを塗布する箇所の汚れを徹底的に取り除きます。
4. エムドゲインの塗布
血液や唾液が付いていない状態で、歯根面を覆うようにエムドゲインを塗布します。
5. 歯肉の縫合
歯肉を元の状態になるよう縫合します。抜糸は術後約2週間後に行ないます。
- 治癒期間の注意点
- ・術後は、手術部位を清潔にし、刺激を与えないでください。
・口腔清掃について、術後しばらくは歯ブラシ・歯間ブラシなどを当てず、うがい薬を使うなど、歯科医師や歯科衛生士の指示に従ってください。
・治療部位を安静にするため、硬い食べ物を噛むのは控えてください。
・喫煙は血行を悪くし、治癒の遅れや治療効果の低下を招くため、喫煙される方には禁煙をおすすめします。 - エムドゲインを用いた歯周組織再生誘導法
のリスク・副作用 - ・歯や骨の状態や位置によっては、手術できないことがあります。
・外科手術が必要なため、腫れや痛みをともなうことがあります。
・外科手術が必要なため出血、神経麻痺、血管損傷、術後の腫れやあざを発症する可能性があります。
・歯肉が引き締まってくるため、被せ物と歯肉との段差が目立つことがあります。
・糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞などが進んでいる方、がんによる放射線治療を受けている方、ステロイド剤を使った治療を受けている方、妊婦や授乳中の方などの安全性は確立していません。
・喫煙される方の場合、血行が悪くなるため、治癒の遅れや治療効果の低下を招くことがあります。
・糖尿病の方や喫煙される方でエムドゲインによる治療をご希望の方は、歯科医師とご相談いただき、状況によっては治療できない場合があります。
歯周組織再生療法 Regenerative
CGFとAFGを用いた再生療法
自己血液から生成するCGF(Concentrated Growth Factors)とは
Concentrated Growth Factorsの略で、『完全自己血液由来フィブリンゲル』を指します。
採取した血液をガラス管で遠心分離して抽出したゲルで、サイトカイン(細胞の増殖させる成分)が多く含まれています。また、添加物(凝固剤や凝固促進剤)を一切加えません。そのため、従来の骨移植で懸念されていた拒絶反応やアレルギー、感染のリスクを軽減でき、より安全な治療を行なえます。
AFG(Autologous Fibrinogen Glue)とは
Autologous Fibrinogen Glueの略で、『自己フィブリノゲン糊』を指します。
採取した血液をプラスチック管で遠心分離して抽出した液体で、抗凝固剤を加えておらず自然な状態に近い血漿です。AFGに骨補填材を混ぜることで粘土状に固まり、骨の再生誘導ができるようになります。
CGFとAFGを用いた再生療法でできること
CGFとAFGは、再生療法においておもに以下のように活用できます。
- 抜歯即時インプラント治療における結合組織移植の代替
- 吸収性のメンブレン(人工膜)として、ソケットプリザベーション、サイナスリフト、ソケットリフト時の移植材または代用骨との併用
- ドナーサイトの止血、保護
- 抜歯などの外科処置時の止血・疼痛コントロール、感染防止、ドライソケット防止
CGFとAFGの違い
血液をガラス管に入れ、ゲル状で採取できるのがCGF、プラスチック管に入れ、液状で採取できるのがAFGです。
AFGは、ガラスの主成分である二酸化ケイ素(シリカ)と反応するため、ガラス容器に入れると数分後にゲル状に変化します。この現象を利用し、ゲル状になる前にガラス容器に骨補填材を入れると塊の状態になります。通常、顆粒状の骨補填材が塊の状態になることで、たいへん扱いやすくなります。
CGFとAFG特徴
- 成長因子を多量に含む血小板がさらに濃縮されているため、骨の少ない場所に使用すると再生が早まる。
- 抜歯箇所の止血や保護、感染防止などに活用できる。
- 自分の血液だけで生成できるため、拒絶反応やアレルギーが出にくい。
- 歯周組織再生療法のリスク・副作用
- ・多くの場合、歯肉の切開・剥離・縫合などの外科手術が必要となるため、腫れや痛みをともなうことがあります。
・患部が治癒するまで腫れや痛みがともない、手術直後は食事がある程度制限されます。
・使用する薬剤が体質に合わないなどの可能性があります。
治療症例 case
単独歯欠損
- 年齢・性別40代・女性
- 治療期間約1ヶ月
- 費用保険適用
- 治療の詳細歯周組織再生療法により、再生材を用いて歯周組織を再生したケースです。一度粘膜を開き、骨補填材とお薬を入れることにより元来の状態に再生することが出来ました。経過は順調で患者様は喜んでいらっしゃいます。
一般的な歯科治療の
よくある質問
Q&A
虫歯ではないのに、歯がしみたり痛かったりするのはなぜでしょうか?
実際にお口のなかを拝見していないため診断はできませんが、歯がしみたり痛かったりする原因としては、虫歯以外にも歯周病、歯ぎしりなどによる歯の疲労、歯肉の退縮による知覚過敏など、さまざまなことが考えられます。適切な対処をするためにも、ぜひお早めに受診ください。
なぜ抜歯の当日はお酒を飲んではいけないのですか?
お酒を飲むと血行がよくなるため、傷口から血が止まらなくなる可能性があるからです。また、お風呂で温まることも血行がよくなってしまうため、抜歯当日は湯船につからずにシャワーで済ませていただきます。患者さまの安全のために、抜歯当日は血行がよくなるようなことは避け、できるだけ安静に過ごすことをお願いしています。
保険診療と自費診療ではどのような違いがあるのですか?
歯科治療では、さまざまな材料や技術を用います。そのなかでも基本的な材料と方法による治療は保険診療となります。それ以外の質のよい材料を使用する場合や、審美性や機能性を追求するための技術や治療方法で治療する場合は、健康保険の対象外となり、自費診療となります。自費診療の治療費については使用する材料や治療方法によって異なるので、詳しくはご相談ください。